比較文学する研究会
比較文学する研究会:研究者支援プログラム

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Last Updated 2000/8/25

学会リポート006

古代文学会夏期セミナー


日  時 ■ 2000年8月21日(月)〜23日(水)

会  場 ■ 箱根小涌谷温泉 旅館「千條」

特派員 ■ 毛利美穂(「比較文学する研究会」管理人)


テーマは「まなざし ―言葉を向ける関係性へ―」。
発表は以下のとおりである。

  • 因果の文体を書くこと ――漢訳仏典への景戒の「まなざし」――
    (三品 泰子)
  • 物語を書く ――万葉集巻十六の題詞、左注の文体――
    (古橋 信孝)
  • 作者未詳歌巻の論 ――『歌の心』の発見――
    (大浦 誠士)
  • 分別の耳
    (津田 博幸)
  • 天皇から天皇へ向かう言葉 〜『寛平御遺戒』の中の「桓武天皇」〜
    (稲生 知子)

発表60分、質疑応答90分。
質疑応答が長いというその時間配分はかなり報告者の好みに合った。発表の醍醐味は、まさに質疑応答にあるからだ。質疑応答がなければ発表などしてもおもしろくない。発表して、さまざまな方の意見を聞く。これがおもしろいのである。

テーマを打ち立てての共同研究、そして強化合宿を思わせる夏期セミナー。
いったい、どのようなものなのだろうか?
これはまさに未知の世界である。いろいろな学会に顔を出しつつも、どこの学会にも所属しなかった報告者にとって、この個性的な未知の学会はかなり興味惹かれるものだった。
共同研究は可能なのか? 可能とすれば、どのような方法をもって行っていくのだろうか?
疑問符が頭の中を飛び交う。
不可思議な学会である。そこで入会してみた。なにしろ報告者は、とりあえず「どんなことでも経験していこう、無駄な経験はない、壁にぶつかれば次の成長につながる」という向う見ずな(面倒くさがり屋な)性格の持ち主である。考える暇があれば体験したほうがよい、という安易な考えと好奇心から、夏期セミナーにも参加した。

今回は個々の発表に対してというよりも、セミナーに参加しての感想を述べていく。

テーマは「まなざし ―言葉を向ける関係性へ―」。
「まなざし」とはなにか。これは対象物(人)への関心と言い換えることが可能だろう。ある思想や書物…観念的なものであれ実質的なものであれ、すべてのものはなにかを受け取り、それを吸収して、そして発信していく。たとえば、日本書紀という書物は、中国の史書の影響を受け、それを吸収して自国の独自性を加えて、そして外国や後世などに発信していくのである。歴史はそうして積み重ねられてきた。
その「流れ」「影響関係」さらには「発展」、すなわちそのような対象物(人)への関心を、ここでは「まなざし」と表現しているのだろう。考えてみれば、ごく当然の流れであり、自明の理といっても過言ではない。
この「まなざし」を使うと、これまで別のものとして意識していたものも、受容・発展ということでつなげうる関係性を持っていたのではないかと考えられる。
これは報告者が常に考えていたことでもあるので、これもまた参加原因のひとつとなった。

さて、このようなテーマを掲げて共同研究をするという。
ということは、このようなテーマ(視点)は一般的ではないのだろうか? 一般的でなければ、これを一ジャンルとして確立することは困難なことなのだろうか?
テーマ自体はごく当然のことであるので、このような視点で考えていくことに対して報告者は違和感はない。違和感を覚えたとしたら、むしろ、なぜ、自明の理ともいえるテーマを提示したのかということである。とはいえ、発表者がどのような視点を披露してくれるのか、またそれを個人の研究だけではなく参加者によってどのように料理されていくのか、また料理していくのか興味があった。

実際に参加してみると、個々違う考えを1つの形に持っていくのはやはり困難な作業であると実感した。
発表者はテーマによって新たな発見ができたという利点もあれば、逆に、テーマにとらわれすぎて自身の主張を曖昧にしてしまったところもあるようだ。これに関しては、せっかく3日間もあるのだから、発表自体への質疑応答が出し尽くされて参加者が一段落ついた後に、「さて、では今からテーマに向けて考えていこう」という形をとればよかったのではないだろうか。その段階にくると、もはや発表者はまな板の鯉である。参加者の考えをまとめる道具の提供者として安穏と構えて遊ばれるのもよし、また一緒に激論を交わすのもよし、である。発表者にとっては、自身の発表がテーマによって料理されるとどのように位置づけされるのかわかって、それは逆に楽しみなことであろう。

テーマ自体はなにも難しいことはない。
発表内容について吟味し終わらないうちにテーマを結びつけ、強引にテーマに沿わせていこうとすると、不思議なことが起こる。ごく当然の、さらに言えば根本的なテーマである。すべての問題点は必ずそこに繋がっていくであろうことを考えると、なんとおもしろいテーマであろうか。

こうして怒涛の3日間は激論の末に幕を下ろした。
今回は触れなかったが、発表に関して最後に付け加えるとすれば、2日目の津田博幸氏発表「分別の耳」は報告者の研究と重なるところがあって、なかなかおもしろかった。もっともおもしろかったのは夜の激論大会であるが、このような意見交換は本当に貴重なものである。


充実したセミナーであった。


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