質疑応答005
仁徳紀再考
毛利美穂に対する質疑応答
■ 質問
匿名希望:日本書紀におる仁徳天皇の特徴を論じるのであれば、古事記等との比較もまたおもしろいのではないでしょうか。
- 発表者:古事記との比較については、それほど重要視していなかったのですが、確かにおもしろい試みです。今後の課題にいたします。
匿名希望:書紀編者の視点による内容の分析を見ておられるようですが、では、「仁徳」といった諡もまた、儒教的聖帝としてのイメージからくるものではないでしょうか。漢風諡号は書紀完成前後にはほぼ確定されていたようなので、当時すでに仁徳天皇における儒教的イメージの付与がなされていたと思います。
- 発表者:確かにそのとおりです。漢風諡号による考察は不充分なのでコメントは差し控えますが、当時、すでに仁徳天皇には儒教的イメージがありました。それは孝徳紀の記事からも明らかです。今回の論では、その仁徳紀に古代的英雄像が見られるが不思議だったので、取り上げたのです。
匿名希望:天皇における英雄性の変遷を拝見し、後世の英雄像のありかたが再認識できました。
- 発表者:後世、英雄と呼ばれる人物はけっして権力の中心人物ではありません。源義経もそうですし、物語においても百合若大臣、そして小栗判官など後世の判官びいきといわれる類の主人公は、権力者の近くにいる人物です。私自身、英雄像の変遷を通してそこまで確認できたのは幸運でした。
匿名希望:儒教的イメージの考察について、もっと追及されたほうがよかったのでは。
- 発表者:ご指摘、ありがとうございました。今後の課題にいたします。
■ 感想等
匿名希望:論には起承転結がありますが。「転」の部分が弱かったように思えます。
- 発表者:ありがとうございます。今後の課題にいたします。
匿名希望:仁徳紀の内容の流れは中国史書の典型です。神との関りも述べていましたが、中国では、黄河を制するものが中国を制するとされ、各王朝の皇帝は治水事業に力を入れていましたし、それこそが天皇の役目なのです。今回、日本書紀の内容を拝見し、その類似点を改めて感じました。
- 発表者:仁徳紀の課役免除等の聖帝的行為については『漢書』文帝紀の影響が見られるという説があります。書紀が中国の史書の影響を大きく受けていることは定説ですが、中国の例を拝見して、私も再認識いたしました。
■ 発表者から一言
貴重なご意見ご感想、ありがとうございました。仁徳に関しては以前から注目していたのですが、これを機にさらに検討していきたいと思います。
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