第10回 えびす信仰研究会
日 時 ■ 1999年10月12日(火)18:00〜
会 場 ■ 西宮神社会館
特派員 ■ 毛利美穂(「比較文学する研究会」管理人)
平日の夕方ということで、諸事情のため実際の開会時刻より遅れたものの、研究会は無事開始。
今回、初めて参加したのだが、その顔ぶれにまず驚いた。
西宮神社の権宮司をはじめ、文化人類学、国文学、美術史など実にさまざまな分野の先生方の参加である。
「えびす信仰」という民衆にもっとも親しまれた信仰を、多角的に分析していこうという研究会らしい顔ぶれである。
発表は、「えびす信仰の視座」(米山俊直氏/大手前女子大学学長)である。
報告内容は、従来の「えびす信仰」の研究をあげ、今後の課題はなにかというものである。
2.大江時雄「エビス地図」
3.エビスとエミシ:宮本常一「エビスたちの列島」
4.海から見た日本:佐々木高明「海人と王権」
5.小山修三『縄文学への道』
6.海の視点を入れたエビス神信仰:諸家の学説を読み直す
7.フィールドワークの可能性:これからの展望
エビス神は、大国主神の子である事代主神とも、イザナギ・イザナミ神が最初に生み(これについては諸説あるが)足のなえていたことから海に流されたヒルコともいわれる。
いずれにしても、両者とも海に関係(事代主神は溺死する)があり、そして権力に疎外された存在である。
なお、広辞苑には次のようにある。
七福神の一。もと兵庫県西宮神社の祭神蛭子命(ひるこのみこと)。海上・漁業の神、また商売繁盛の神として信仰される。風折烏帽子(かざおりえぼし)をかぶり鯛を釣り上げる姿に描く。3歳まで足が立たなかったと伝えられ、歪んだ形や不正常なさまの形容に用い、また、福の神にあやかることを願って或る語に冠し用いたともいう。
興味深いのは、エビス神になぞらえられる事代主神やヒルコが非支配側にいる神であることに対応してか、権力に疎外された対象である人物のいる場所と、エビス神が祭られる場所とが、往々にして重なっていることである。この、非支配側にあることが民衆に密着したエビス神を形作ったのであろう。
エビス神は海に関連するが、エビス神を祭ってあるのは海の近くばかりではなく、山中にもある。佐賀には多くのエビス神がある。
これについては柳田国男が「百姓えびす」や「山人」などに述べているようである。(未見につき断定はできないが、ご了承ください)
これは、山から海をのぞむという意味であろう。
さて、海と山に存在するエビス神。
それをふまえた上でフィールドワーク(現地調査)すべきであろうと米山氏は締めくくった。
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