質疑応答018
西洋文化とキリスト教:異端裁判から魔女裁判へ
毛利美穂に対する質疑応答
→NO.018「西洋文化とキリスト教:異端裁判から魔女裁判へ」
■ 質問
匿名希望:魔女に関するレポートを拝見し、以前に発表された巫女に関する毛利様のご論を思い出しました。魔女が教会の思惑によって弾圧される過程と、皇極紀における巫女弾圧の過程とは、似ているのではないでしょうか。この東西の宗教上の現象について、どのようにお考えですか。
- 発表者:魔女が教会側の、いわゆる俗的思惑によって弾圧されるに至った過程と、皇極紀に見られる巫女迫害の記事との関係とのご質問ですが、書紀の記事に関しては2つの特徴があると思います。まず、巫女に付された神性性が下落して、神秘性を残すのみとなったこと、次に、皇極紀においては皇極天皇即位の正当性を誇示するために神秘的要素が天皇に集約され、その結果、他の巫女の迫害が行われたことです。魔女があくまでも迫害される側にあったことに対して、巫女には迫害される者とそうでない者がいたということで違いが見られます。ただ、確かに魔女と巫女の境遇は似ていると思われます。浅学のため現段階での比較は無理ですが、今後の課題にしたいと思います。ありがとうございました。
匿名希望:魔女裁判を利用した教会の思惑には驚きましたが、そのような教会の都合による奇妙な制度は他にもあったのでしょうか。
- 発表者:魔女以外では、娼婦に関する教会の態度も奇妙です。聖母マリアと娼婦マグダラのマリアとの混合はよく見られ、女子修道院は時に聖なる売春婦宿と同一視されていました。性行為に付随する生殖と淫楽に関して、教会側は、前者による行為を推奨し、後者による行為を罪としていました。が、後者を行為そのものから分離できなくないことから、後者を娼婦に委ねて、社会秩序の維持につとめるようになります。同様のことを、パリ大学教授のパラン=デュシャトレは『一九世紀パリの売春』(1836)で、売春は下水渠やごみ捨て場と同じくなくてはならないものだから、社会秩序上「悪」とされる売春を全面的に禁止できないと述べています。娼婦を禁止してしまえば良家の娘へ被害が及んで秩序がなくなる等がその理由ですが、なんだか、どこか腑に落ちないですね。
匿名希望:魔女裁判が行われた一番大きな理由は何だと思いますか。
- 発表者:社会不安ではないでしょうか。以前、瑞祥・凶兆・災異について論じたときにも触れましたが、社会が不安になってくると宗教の持つ役割が大きくなります。魔女は、まさに宗教のスケープゴートだったといえます。
■ 感想等
hina:宗教は複雑でわかりにくいと思っていましたが、キリスト教における魔女裁判の位置が明確になりました。今度は日本の宗教との比較をしてください。
- 発表者:ありがとうございます。宗教については私も勉強不足なので、比較できるのはいつのことになるかわかりませんが、少しずつ勉強していきたいと思います。
■ 発表者から一言
貴重なご意見ご感想、ありがとうございました。今回はレポートなので気楽に書きましたが、宗教を扱う上の難しさを味わいました。これに懲りず、少しずつ勉強していきたいと思います。
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