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Last Updated 2001/2/25

質疑応答016

仁徳紀再考:英雄と聖帝の融合

毛利美穂に対する質疑応答


■ 質問

hina:「聖」について述べられていましたが、やはり聖人となると聖徳太子のことも考えなければならないと思います。聖徳太子についてはあまり触れられていませんでしたが、いかがお考えですか。

発表者:聖徳太子の聖性については、仏教的要素を考慮するなど、さらに考察を加えなければと考えています。いずれまとめる予定ですので、もうしばらくお待ちください。

匿名希望:「聖」の表記を、英雄性とからめて論じられているのは、たいへん興味深く、おもしろい試みだと思います。ただ、その前に「聖」の定義をきちんとされた方がよかったのでないでしょうか。

発表者:ありがとうございます。聖性については、今回取り上げたもの以外にも、聖徳太子や七福神、高野聖など、さまざな形があると思います。今後のさらに検討を重ねていきたいと思います。ご指摘ありがとうございました。

まさ:確かに毛利さんの分析されたように「聖」の表記と武力の行使は書紀編者にとってかけ離れた物だったのかもしれません。では、天武天皇は書紀編者にとってどのような存在だったのでしょうか?書紀の編纂を命じ、当時の皇統の始祖ともいうべき天武を軽んじるというわけにはいかなかったと思うのですが。それとも天武の表記の仕方には「聖」とは別の特別な概念が用いられているのでしょうか?

発表者:書紀における天武の存在は、やはり重要視されていると考えられます。今回は「聖」の概念から考察していきましたが、それ以外の概念が天武には付されているのではないでしょうか。私は、天武と神武の関係を考えています。以前(NO.012「神性・神秘性からみる巫女の変遷」)に、神功皇后と皇極(斉明)の類似を検証しましたが、同様のことが神武と 天武にも考えられると思います。これについてはいずれまとめようと考え、現在準備中です。また発表いたしますので、ご教示ください。

まさ:毛利さんの説によると中国的・儒教的な聖帝像を日本風に変容し従来の古代的英雄像としての天皇像と融合したものが書紀の英雄像・聖帝像とのことですが、これを対外的な必要からくる聖帝像としてのみ捉えてよいのでしょうか?

発表者:現在のところはそのように考えています。
ただし、書紀における「聖」の概念についてはまだ考えるべきところが多く、実は先日、某研究会で「聖」概念について口頭発表したのですが、課題ばかりが残っている状態です。「聖」概念がいまだに漠然であることが原因だと思われますので、早急にまとめていきたいと考えております。ありがとうございました。

■ 感想等

hina:日本書紀の「聖」と論語的思想とを結びつけた点は、たいへん興味深い試みだと思います。論語の例を引き、武力を用いない方がより美徳であったという見解はとてもおもしろかったです。

発表者:ありがとうございます。

まさ:5節の「書紀に見える古代的英雄像」の最後に

即位するまでは自らが英雄性を発揮していたとしても、天皇となると、それは側にいる者によって得られるのである。
とありますが、このような構図は律令制化の天皇制にも当てはまるのではないでしょうか?
律令制下の貴族制度や政治史の研究には天皇の権力を制限する貴族(豪族)層の存在を取り上げたものが多くありますが、このような説を認めた場合、書紀における聖帝・英雄などの理想的な天皇像のなかにもこのような構図が反映することはあり得るのではないでしょうか?特に時代が遡れば遡るほど朝廷は大和の豪族を中心とする合議制で動かされていたと考えられますから。
ただここで豪族が直接補佐していたのではなく、ヤマトタケルをはじめとする皇族が補佐しているところに、天皇を中心とする国家を形成しようという書紀編者の意志が見えるのではないかと思います。
発表者:はい。その通りです。
天皇にのみ集約されていた英雄性が、その側近に移る過程、しかもその側近に関しても、ヤマトタケルをはじめとする皇族から豪族層に移る過程を描くことによって、律令制下の状況説明がなされていると考えられます。律令制下の貴族制における貴重なご意見、ありがとうございました。

■ 発表者から一言

貴重なご意見ご感想、ありがとうございました。今回の論は、第5回発表原稿での考察をさらに進めたもので、「夙志」(大手前大学大学院研究発表記録)第5・6号(2000.12.10)の原稿を再録したものです。「聖」概念については未熟な点が目立ったように思います。さらに視野を深めていきたいと思います。

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