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Last Updated 2000/12/25

質疑応答015

魏志倭人伝を読む:黥面文身

毛利美穂に対する質疑応答


■ 質問

まさ:「鯨面文身」ですが、これを一つにくくって考えてよいのでしょうか。

発表者:別のものとして考えるべきと思います。入れ墨をする部分が異なりますし、例として挙げた資料に「鯨面文身」とあるのは『魏志』倭人伝くらいだと思います。

匿名希望:「鯨面」は刑罰へと目的が移行していきますが、「文身」にはそれが見られません。その辺りについては、どうお考えですか。

発表者:喜田貞吉氏の論に見られるように、衣服の発達によって入れ墨を施す部分が体から顔面に移行していったと考えられます。そこに刑罰としての目的が付されると、当該人物が罪人であることを一目で確認できなければなりませんので、当然、周囲の目にさらされない身体部分よりも顔面部分に集中したのではないでしょうか。

匿名希望:日本の例として安曇連・久米部等、海との関係について書いてありますが、陸との関係についてはいかがお考えですか。

発表者:「鯨面文身」が海の害から身を守ることから発生したことを考えますと、原点は海にあったと考えています。その習俗がやがて陸に入ったのではないでしょうか。これについては、網野善彦氏『日本の歴史00巻「日本」とは何か』(講談社 2000.10)において、縄文→弥生イコール狩猟→稲作ではなく、また「百姓」は農民だけを指すのではないことを確認した時、狩猟採集民と稲作民との交流を経て、海の習俗が陸に伝わっていったのではないかと考えております。

まさ:特に今回は日中の「鯨面文身」を比較することが主な目的だと思いますが、その比較対象が中国史料では「文身」、記紀では「鯨面」となっており、厳密には比較できていないように思います。

発表者:ご指摘ありがとうございます。今後、さらに考えていきたいと思います。

まさ:仮に比較するのであれば、「鯨面」と「文身」が同じ目的で行われる風俗・風習であることを証明しておかなければならないのではないでしょうか。

発表者:証明不足であったことは、感じております。ご指摘ありがとうございます。

まさ:記紀の「鯨面」の分析で、安曇連・久米部の例を挙げて海との関係を説かれていますが、では飼部・鳥養部の「鯨面」についてはどのように解釈されるのでしょうか?紀の補注などより、「中国風の思想から説いた起源説話」、「動物の狩猟・飼育等の特殊な職業に従事する集団に属する人々」というような見解を引用されていますが、このままでは海に関わるものというよりも動物に関わるものという意味が強くなってしまうのではないでしょうか。

発表者:海に関わるものが原点となっていると考えております。
それが陸に移行していく過程については、今後のさらに検討を重ねていきたいと思います。ご指摘ありがとうございました。

■ 感想等

まさ:中国側の史料で「鯨面」を見ると刑罰としての色が濃く、「鯨面」と「文身」が同じ目的の風俗というのは難しいように感じます。もっとも風俗としての「鯨面」の例もあるようですし(『漢書』匈奴伝)、蛮族の風俗として捉える方法もありそうですが…。

発表者:確かに、そうですね。中国側の資料については未熟な点が多かったと思います。ご指摘ありがとうございます。
「鯨面」と「文身」の起源については日中とも同様のものと考えております。その目的が、呪術的なものから装飾的なものへ目的が移行してていくことは今回の発表でも少し触れ、そして、前回のNO.014発表における、身分標識及び装飾の役割を入れ墨が担っていたという論へとなりました。衣服の発達により入れ墨が顔の部分に移行し、さらにそれが目に集中されていくのは、倭人伝の「後やや以て飾りとなす」の記事からもわかりますように、装飾としての意味合いが深くなってくると思うからです。
刑罰としては「文身」ではなく「鯨面」とあるのは、それと同様の理由からだと思います。
その装飾から刑罰への移行がどこに見られるのか、現時点では明確な答えを見出せていないので、今後の課題とさせていただきます。

■ 発表者から一言

貴重なご意見ご感想、ありがとうございました。前回に続き服飾関係について論じましたが、未熟な点が目立ったように思います。さらに視野を深めていきたいと思います。

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