比較文学する研究会
比較文学する研究会:研究者支援プログラム

Since 1999/9/14
Last Updated 2000/8/25

質疑応答011

川端康成『雪国』:『雪国』における「鏡」の作用

毛利美穂に対する質疑応答


■ 質問

hina:前回の夏目漱石「草枕」、今回の「幻影の盾」との比較というご論を拝見して、両作家の比較がひとつの作品だけに見られる偶然ではないことに気づき、川端・漱石比較の可能性を発見しました。両作家の比較は興味深いテーマですが、共通点がみられる理由をどのようにお考えですか。

発表者:今回の「幻影の盾」との比較の方を先に書いたのですが、これもまた、ほんの偶然なのです。いわゆる近代文学は専門外で的確な解答はできないのですが、前回の発表に「川端が、「新思潮」もしくは菊池を通して、当時の大作家であった漱石に対して、心理的に近しい位置にいたと考えることはそう難しくはないだろう。」また、「そこに時代の風潮であったとしても、ここに、一時は英文科に籍を置いた川端と、英文学者である漱石との共通点が見られるのだ。」と書きました。作家論から両者の比較はまだ可能と思いますが、今後、少しずつ考えていきたいと思います。

匿名希望:「幻影の盾」はあくまでも現実を映し出す鏡ですがタイトルに「幻影」とあるので、これもまた川端の『雪国』における鏡と同様に、非現実を映すものとは考えられないでしょうか。

発表者:確かに、タイトルから推察するに非現実を映すものと考えることもできるかもしれません。「幻影の盾」における鏡の作用について本間久雄氏の見解を引用しましたが、そこに「事件の描写よりも、むしろ事件によって醸し出される女主人公の心の悩みが、描写の中心となっているから」とあります。目にみえない「心」の問題から考えると非現実とも考えられるでしょう。ただし、現時点では結論は導き出せない状態です。ご指摘、ありがとうございました。

■ 感想等

hina:「西洋の影響を受けた当時の文学の中にあって、川端作品は日本の文学だと称される」と書いておられますが、その彼もまた漱石と同様に英文科出身であることに興味を惹かれました。両作家の比較論はさらに発展できるものと感じました。

発表者:ありがとうございます。夏目漱石・川端康成だけでなく芥川龍之介など英文科出身者が日本の美を描くこともまた非常に興味深いことだと感じました。

■ 発表者から一言

貴重なご意見ご感想、ありがとうございました。近代文学は専門外なので思いつきからくる論でお見苦しい点も多々あったかと思います。今回お寄せいただいた方法論をもとに、さらに研究を深めていきたいと思います。

TOPへ
このページに関するご意見・ご感想は → メール

Copyright (C) 1999-2024 "比較文学する研究会" All Rights Reserved.