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Last Updated 1999/10/25

質疑応答001

仁徳紀「解髪」と持統紀「被髪」に関する一考察

毛利美穂に対する質疑応答


■ 質問

匿名希望:死者を前にしての髪の表記のみを見ておられるようですが、文学的に見るのならば、内容面からも検討すべきではないでしょうか。

発表者:はい。そのとおりです。とりあえず今回は表記のみに焦点をあてましたが、現在、内容面で検証しているところです。改訂版を発表する予定ですので、お待ちください。

匿名希望:「解髪」が仁徳天皇、「放髪」が山辺皇女。男女の違いなのでは?

発表者:それはないようです。日本書紀・古事記を見た限り、「解髪」をしている人物はアマテラス・ヤマトタケル・神功皇后・仁徳なので、男女差はないといえるかもしれません。(断定はできませんが) 男女差よりも、心情の差異でしょう。

匿名希望:日本書紀には「放髪」の例は1例だけですか?

発表者:はい。

匿名希望:幽霊との関係があるようですね。その辺りはどのようにお考えですか。

発表者:「放髪」は異常な心情を表すので、狂人や幽霊の姿として能や浄瑠璃、歌舞伎等にも出てきます。異常な心情ということで幽霊とはやはりイメージ的に結びついていきます。ヨーロッパの幽霊になると異なりますが。また、中国には髪を梳く幽霊も存在するので、検討してみるべきでしょう。

匿名希望:「解髪」と「放髪」、その違いをもっと具体的に示してください。

発表者:「解髪」は意識的に、「放髪」は無意識のうちになる髪型です。したがって、意識的にした髪型に呪術的要素が加わる可能性もあるでしょう。一方、無意識的になった髪型は、心情のたかまりを表していると理解できます。

■ 感想等

匿名希望:「放髪」の例を中国文献から見ているようですが、そもそも中国における「放髪」は結っていた髪が解けてバサリと頭にふりかかることを意味します。したがって蛮族の風習を表すことは『礼記』にも記してあります。

発表者:ありがとうございます。『礼記』等はすでに検討済みでしたが、参考になりました。「放髪」が結っていた髪が解けたという話は、当時の髪型が窺える例ですね。

■ 発表者から一言

貴重なご意見ご感想、ありがとうございました。幽霊への展開はそれほど重視していなかったのですが、おもしろいですね。これらを参考にして、さらに書き直していきたいと思います。


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