比較文学する研究会
比較文学する研究会:研究者支援プログラム

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Last Updated 2007/10/4

活用ガイド:5.オンライン研究会の問題とデータ公開

「比較文学する研究会」の開設9周年の現状報告。
開設目的等はACADEMIC RESOURCE GUIDEに掲載されていますのでご参照ください。




オンライン研究会の問題とデータ公開

毛利 美穂

■ はじめに

「比較文学する研究会」を開設して9年が経った。
10年を「ひと昔」というのであれば、それだけの歳月が経ったということである。

開設当初は、ウェブ上での人文系の研究論文公開が少なく、当サイトの評価も賛否両論があった。データ公開に意欲的なユーザー、また海外の研究者からの評価は高かったが、発表媒体や著作権等の問題から、現場での評価はある程度厳しいものであったといえよう。
現に、公開した論文が無断盗用された例もあり、当時、大学院生であった筆者の研究成果をこのような場で消費していいのかという苦言をいただいたこともある。

そのため、投稿論文については返却し、不特定多数の人間に対する情報(研究成果)発信をいったん停止することにした。サイト自体は、需要の多い「学会情報」を中心に更新を行い、紙媒体を中心とする従来の研究生活に戻ったのである。

現在、自らの研究生活を新たに構築するに至り、改めてオンラインにおける研究会とデータ公開について考えてみたい。


■ オンラインでの論文公開

現在、人文系でも論文を全文公開しているサイトが多く見られるようになった。
主にPDFファイルへの変換ソフトの普及に比例して、公開数が増えてきている。
「比較文学する研究会」でも、かつて、複写不可や署名を付したPDFファイルによる論文公開を計画し、事実、一部公開したこともあるが、それは短期間のうちに撤廃している。
撤廃理由は、公開したときの見た目が意外に仰々しかったこと、そして常時接続が一般化していたとはいえ、当時は、まだ今のように回線状況が快適とはいえず、署名などを付加したファイルは気軽に公開できるデータ容量ではないと判断したためである。

現在公開されている論文は、既刊のものの再掲がほとんどであり、最新論文においては、ネットワーク系電子出版物も登場している。
その場合も、PDFファイルであることが多い。
PDFファイルの方が、フォントの制約がなく、HTMLの知識がなくても作成しやすいという利点もあるかもしれないが、盗用されにくい配慮があることもその理由であろう。

一方、学術論文以外の文章は、PDFファイルではないことが多い。
その場合、ある程度のHTML知識が必要となるが、ユーザーの利便性や、ヴィジュアル面を考慮すると、やはり、従来の形式の方が良いかと思う。

このように現在は、利便性等では劣るが、論文公開にあたってはPDFファイルの使用が主流となっている。
業績のカウントとなる論文に対する意識が、特に人文系の場合、公開媒体に安全性とある程度のステータスを求めるのは当然である。

論文公開にあたっては、このようなある程度の制約を加えた形(それは、パスワードによる制約も含まれよう)が、今後もしばらくは続くであろう。
業績に対する評価基準等を考えると、それも仕方のないことである。
ウェブ上で最新学説をリアルタイムで閲覧できる環境は、まだ整っていないのである。
しかし、それは逆にいえば、最新のものでなければ、ウェブ上で閲覧できる状況であることを示しており、今後さらに増えていくものと考えられる。


■ データ公開

データ公開は飛躍的に増加した。

ブログは、HTML知識を要しない手軽なウェブ公開手段として普及した。
手軽であるだけに内容は玉石混淆で、有意義な情報と公開されているブログ数は必ずしも比例していないが、情報量は増えた。

また、研究分野においては、特にデータベースの増加が顕著である。
今や各大学や研究機関が、次々と研究成果をデータベース化し、ウェブ上に公開している。
これにより、文学研究の研究スタイルも様変わりした部分もある。

ツールとしてのデータ公開は、政策的な背景もあるだろうが、需要も多く、一般ユーザーの他、海外の研究者による利用も多い。今後も各種データベースが公開されるであろう。

共同研究として、このようなデータベース化の作業は今後も求められてくるであろうし、ツールの需要はやはり多いのだという現実を再確認する。


■ 最後に

ウェブ世界の状況は、9年前とは確実に変化している。
筆者の研究環境も変化した。

とはいえ、オンラインでの研究会やデータの公開には、やはりある程度の制約が必要となってくる。
不特定多数に公開したい(できる)データとそれ以外のデータが存在する限り、両者を区別し、公開することが必要であろう。公開形式の多様化にあわせ、発信者自身が明確な意図のもと、実施すべき問題である。
また、研究会というコミュニティー中の交流形態や情報公開にも、ある程度の段階を設けることが求められる。
通信媒体やコミュニケーションツールの種類は複数あるが、情報公開の目的や意義にあわせた方法を模索していくことも大切であろう。


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